都市農業をめぐる情勢

都市農地の保全へ 生産緑地の10年延長など可能に

 4月13日、生産緑地法の改正案が衆議院本会議で採決された。市町村の条例により、生産緑地の指定を10年延長する「特定生産緑地指定制度」の創設や下限面積を現行の500平米から300平米以上とすることが可能になるほか、生産緑地内での直売所やレストランの設置が可能となる。
 都市農業とは、特に農地税制面で都市計画法の市街化区域内とそれ以外の区域とで取り扱いが大きく異なることから、市街化区域内で行われる農業を指すことが多い。特に、昭和60年代の地価高騰を受け、平成3年に行われた生産緑地法の改正では、三大都市圏の特定市における市街化区域内の農地を「保全する農地」と「宅地化する農地」に区分した。「保全する農地」は「生産緑地」として、税制面の優遇を措置する一方、「宅地化する農地」は固定資産税の宅地並み課税・相続税の納税猶予制度の不適用などにより、宅地化の促進が図られた。また、この改正で30年経過生産緑地の自治体への買取り申出が可能となった。
 近年では、景観・防災・体験・学習など、都市農地の持つ多様な機能に対する市民の 意識の高まりから、平成27年に成立した「都市農業振興基本法」、および同法に基づき平成28年に制定された「都市農業振興基本計画」において、都市農地は「あるべきもの」と位置づけられ、これまでの「いずれ宅地化すべきもの」からその役割を変化させてきている。
 基本計画においては、国が体験型市民農園や高齢者等への福祉目的の活用促進、学校教育の充実など、JAにおけるくらしの活動などとも密接に関わる場面が想定されている。基本法でも地方行政が都市農業振興に向けた地方計画を策定することを求めており、この中でJAが果たす役割は極めて大きいと言えよう。
 一方で、平成34年には面積ベースで約8割の生産緑地が指定後30年を経過するため、自治体への買取り申出が行われ、他用途に転用されることが想定される。
 JAグループとして、30年経過後の税制等の制度設計を踏まえ、農家の意欲を引き出しつつ都市農業振興にどのように取り組むかを考えることは喫緊の課題となっている。


 都市農業を取り巻く情勢と課題等の概要は次のとおり。

◆都市農業を取り巻く情勢と課題

◇歴史

 歴史的には、都市農業は都市住民との生活の関係の中で発展し、都市的土地利用と競合してきた。高度経済成長期には、旺盛な宅地需要の下で都市農業への風当たりが強いものとなり、地価の上昇による土地所有コストの増大等の要因も相まって、都市農業は強い逆風にさらされた。
 しかし、近年都市農業に対する都市住民の世論は大きく変わりつつある。食の安全への意識の高まりから、身近な農地で生産された新鮮で安全・安心な農産物を提供するという都市農業が果たす役割が改めて評価されている。また、従来の農産物の供給機能に加え、防災・景観形成・環境保全・農業体験等の場など、多様な機能への評価が高まっている。

◇現状と課題

 都市農業に関連する制度設計において、市街化区域内の農地は、将来宅地となることを前提とした税制措置が適用された。現行の生産緑地法では、生産緑地地区内に対する固定資産税および相続税の特例措置等を可能にしている。
 都市農業の経営状況は、一戸当たり経営耕地面積は約75アールと全国平均の約6割にとどまる一方、農産物の年間販売額は高く、消費地に近いという立地を活かした消費者ニーズに応えた少量多品目の生産等により、小規模ながらも収益性の高い農業を営んでいる。
 しかしながら、都市部においても農村部と同様に高齢化や担い手不足が進んでおり、農業経営の改善や営農継続そのものが困難な中で、相続等を契機とした農地の売却や転用がさらに進む可能性がある。また、今後の人口減少等による宅地需要の低下により、賃貸用不動産経営が困難になっていくことが見込まれ、農業以外による安定的な収入の下で継続されてきた都市農業の経営基盤の不安定化が懸念されている。

表1 都市農業にかかる法制度等
▲ 表1 都市農業にかかる法制度等

◆生産緑地制度の概要と論点

◇概要

 「生産緑地」は、生産緑地法に基づき指定される、市街化区域内の農地を指す。生産緑地に指定されると、30年間の土地利用制限などを前提に、税制上の特例措置を受けることができる=表2。三大都市圏を中心に指定がなされており、都市農地の保全に貢献している。
 現行の生産緑地法では、指定後30年の経過や当該地での主たる農業従事者の死亡等によって自治体に対する買取り申し出が可能となる。しかし、財政上の理由から、自治体や周辺農家が買い取ることはほぼなく、最終的には多くが宅地に転用されている。

表2 農地にかかる税制の概要
▲ 表2 農地にかかる税制の概要

◇生産緑地の34年問題

 現行の生産緑地は約8割が平成4年に指定されたもので、平成34年に指定から30年を経過する。多くの農家が30年の経過を契機に、市町村に対して買取り申し出を行うことで、生産緑地の減少と、それに伴う農業・組織基盤の弱体化が加速度的に進むことが懸念されており、これを「34年問題」という。
 相続税納税猶予制度適用生産緑地は終身営農が要件となり、主たる従事者の死亡等以外の理由で買取り申し出をすると相続税と利子税を支払う必要があるため、このような生産緑地はただちに買取りがなされるとは考えにくいが、30年が経過し、実質的に土地の利用規制がなくなった生産緑地については、税制上の優遇が引き続き措置されない場合には多くが宅地として放出される可能性がある。

◆JAグループに求められる対応

 都市農業振興基本法の成立は、都市農業が法律上に位置づけられたことを意味する。「34年問題」に関連して、企業等が宅地としての転用によるビジネスチャンスを求め、関心を寄せる中、JAグループにおいては、税制の制度設計を見据えつつ、市民農園・体験型農園等をはじめとする地域・住民と結びついた取り組みの提案・普及を通じ、都市農地を農地として守り続けていく取り組みが必要となる。

 
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