環太平洋パートナーシップ(TPP)協定が10月5日、アメリカ・アトランタ州で開かれた交渉参加12か国による閣僚会合の場において大筋合意された。
 日本の関税撤廃率は品目数、貿易額ベースともに95%を超えるなど、過去の経済連携協定の中でもかつてない高い水準での決着となった。日本で関税が残ったのは農林水産物のみであるが、全体の81%に上る1885品目で関税が撤廃された。最大の争点であった重要品目の米は、アメリカとオーストラリアに合計7万8400tの特別輸入枠を新設し、その他の重要品目についても、麦の実質的な関税にあたるマークアップ(売買差益)や牛肉・豚肉の関税も大幅に削減された。また、本府において産出額が米を上回る野菜は、玉ねぎとスイートコーンを除いて、現行3%の関税が即時撤廃、茶も段階的に関税撤廃されるなど、農産物市場の大幅な開放を迫られることとなった。
 大筋合意を受けて、7日には第3次安倍内閣が発足し、農林水産大臣には自由民主党TPP対策委員長などを務めた森山裕氏が就任した。9日には、安倍総理を本部長とする「TPP総合対策本部」が、農水省にも同日に森山大臣を本部長とする「農林水産省TPP対策本部」が設置された。年内には「総合的なTPP関連政策大綱(仮称)」を策定するべく、検討が進められる。
 今後は、細部の調整を経て協定内容が確定した後、政府間の署名を経て条約を承認する「国会批准」が行われて「発効」となるが、アメリカの規定上、署名の90日以上前に議会へ通知する必要があるので、発効は最速でも来年1月以降となる。また、全参加国が国内手続を協定署名より2年以内に終えられない場合、GDPの合計が85%以上を占める6か国が手続を終える必要があるが、域内GDPの8割を占める日米では、来年に参議員選挙や大統領選挙を控えているため批准手続きの長期化も予想される。アメリカでのTPP推進派のなかからも、合意内容を「不十分である」と批判の声が上がっており、かつてTPPを推進し、次期大統領選挙における民主党の有力候補であるヒラリー・クリントン氏も不支持を表明するなど、先行きは極めて不透明な状況にある。
 JA京都中央会の中川泰宏会長は、大筋合意を受け「京野菜のブランド力の一層の強化や生産振興に努めていく。どのような状況下においても、農業者を支え、夢や楽しさを持てる地域社会を築いていくため、全力を尽くしていく」と決意を語っている。

 
 TPP大筋合意の概要は次のとおり。

◇重要品目の合意内容(表1)

◆米…現行の国家貿易制度を維持するとともに、枠外税率(341円/s)を維持したうえで、ミニマム・アクセス(MA)の枠外で、SBS方式(売買同時入札方式)により、アメリカ、オーストラリアに合計7万8400tの特別輸入枠を新設した。またMAの中でも、中粒種・加工用に限定してSBS方式に変更(6万t)するなど、米国産米への事実上の優遇措置が取られた。
◆麦…現行の国家貿易制度を維持するとともに、枠外税率(39円/s)を維持した。ただし、マークアップは9年目までに45%削減し、小麦は25.3万t、大麦は6.5万tの特別輸入枠を新設する。
◆牛肉…現行の関税38.5%を段階的に削減し、16年目以降には9%にまで引き下げるなど、大幅な関税削減となった。輸入急増に対するセーフガードも導入されるが、関税は18%までしか戻らず、4年間発動がなければ廃止される。
◆豚肉…差額関税制度および分岐点価格(524円/s)を維持する。低価格帯の肉にかける従量税は、482円/sから10年目に50円にまで引き下げ、高価格帯の従価税については10年目に撤廃する。セーフガードも導入するが、12年目には廃止する。
◆乳製品…脱脂粉乳やバターは、関税削減や撤廃は行わず、合計7万tの低関税輸入枠を新設する。一部のチーズやホエイは関税を長期間かけて撤廃、プロセスチーズはアメリカ、ニュージーランド、オーストラリアに各150tの輸入枠を新設する。
◆甘味資源作物…粗糖や糖製糖では現行の糖価調整制度を維持するが、高糖度原料糖では関税撤廃や調整金の削減を行う。また、加糖調製品は合計9.6万tの低関税輸入枠を新設する。

 

◇重要品目以外の合意内容(表2)

 茶、生鮮果実、鶏肉、鶏卵などにつき、段階的に関税を撤廃する。
 野菜については、玉ねぎやスイートコーンなどの一部を除き、現行3%の関税が即時撤廃される。



◇農林水産分野に係る基本方針のポイント

 重要品目が確実に再生産できるようにするため、国会承認までに対策の全体像を取りまとめ、政府全体で責任を持って対策を実施する。
◆攻めの対策…体質強化対策
 担い手の育成・確保、農地集積・集約化、6次産業化や輸出拡大など。
◆守りの対策…重要品目対策
 米での政府備蓄米の買い入れ量の拡大や、麦でのマークアップに代わる国産振興策の財源確保など、品目ごとの措置を講じ、国内生産への影響を緩和する。

◇農水省の動きと農業者の反応

 大筋合意を受けて、交渉結果を詳細に説明し、農業関係者の意見を集めて今後の施策に活かしていくため、全国でブロック別意見交換会を開催している。近畿ブロックでは10月19日に畜産関連、22日に園芸・特産および稲作・畑作関連の意見交換会が開催された。いずれの意見交換会でも、「JAや農家などの要望をしっかり政策に反映してほしい」「詳細な影響試算を出してくれないと安心できない」など、農業関係者からの要望や不満の声が上がった。
 また、近畿農政局の村上堅冶局長は、「説明会は細やかに開催してほしいという意見が多い。今回の農水省の組織改編で新たに配置した地方参事官が各地を回り、TPPをはじめとする農政課題に対応していきたい」と話した。

 
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