8月28日、東京・永田町で行われた参議院本会議で農業協同組合法の改正案が可決された。来年4月1日から施行されることとなる。
 今回の法改正では、JAの非営利規定を見直し、事業目的に「農業所得の増大」を明記したほか、原則としてJAの理事の過半数に認定農業者や販売・経営のプロを充てることとした。農協法上の中央会制度は廃止されることとなり、JA全中は4年後に一般社団法人に、都道府県中央会は連合会に移行する。また、JAの監査については、施工後3年半までに公認会計士監査に移行することとされた。
 焦点となっていた准組合員の事業利用制限は今後5年間実態調査を行い規制の在り方を検討することとし、規制導入の可能性を残した。
 同法の成立を受け、JAグループでは10月のJA全国大会を契機として自己改革の具体化に注力することとしている。農家からの期待が強い営農・経済事業の強化については、全国大会議案において「農業者の所得増大」を掲げ、JAと中央会・各連合会が一体となって取り組む。
 同法案の衆議院での審議入りから参議院本会議での可決までに要した期間は約3か月半。衆参両院の農林水産委員会では、准組合員の利用の在り方の検討方法などそれぞれ15項目を超える付帯決議が採択された。
 また、今回の改正法では理事構成の例外措置や農協監査士の位置付けなど、細則について多くの内容を政省令で定めることとしており、その策定に向けた議論を進めることとしており、年内での交付を目指す。


 
 改正農協法の概要等については次のとおり。

◆改正農協法の概要

○JAの事業運営原則 
 「組合員・会員への最大奉仕」の目的規定を維持する一方で非営利規定を廃止した。「農業所得の増大に最大限配慮」(7条2項)を新たに追加し、農業者を正組合員とする職能組合としての責務を明確化した。
 安倍政権が掲げる農業の成長産業化に向け、JAグループに改革を促す狙い。特に、単位JAが地域の実情に合わせて主体的に経済事業を展開していくことを期待するが、具体的な運用については政省令に委ねられた部分も多い=表1
 政府・与党は7条2項について、JAが農産物販売・6次産業化などに積極的に取り組むよう意識改革を求めた改正法の象徴的部分であるとする一方、国会審議では同条項が准組合員の位置づけ軽視につながりかねないとの懸念も相次いだ。

○JAの理事構成
 単位JAの経営感覚を高める狙いから、役員体制の見直しを促すこととした。原則として、理事構成の過半数は認定農業者や農産物販売・経営に実践的な能力を持つ人材を充てる。一方で、この規定は協同組合の「自主・自立」の原則からは疑問の大きい措置で、認定農業者の数が少ない地域などでは要件を満たせない恐れもあるため、政省令など具体的なルールづくりにあたっては柔軟な対応が求められる。

○准組合員の利用規制
 改正法の施行から5年間実態調査を行ったうえで、准組合員の利用規制導入の是非を含めて在り方を判断する。利用規制の在り方の検討にあたっては、参院農林水産委員会で採択した付帯決議=表2=で地域インフラとしてのJAの役割や関係者の意向を「十分踏まえること」などを明記し、規制導入への強い懸念を示した。
 農林水産省は国会審議で「農家の農業所得が増大できていれば、准組合員向けのサービスをしても正組合員のメリットは阻害されていないことになる」との見解を示しており、農業所得を高めていけるかどうかはJAの取り組み次第だとも受け取れる。JAの自己改革は組合員の農業所得増大を主眼とするものだが、准組合員の利用規制を食い止めるためにも極めて重要なものとなっている。

○JA中央会
 中央会の規定は農協法上から全面削除とした。これに伴い、JA全中は平成31年9月末までに一般社団法人に、都道府県中央会は農協法上の「連合会」に移行する。ただし、移行後の法人が「中央会」の名称を使用することは可能で、その要件は今後政省令で定められることとなる。

○JAの監査
 JA全中の監査部門「JA全国監査機構」は分離して新たな監査法人として独立させるとともに、一般の監査法人と同様公認会計士法に基づく監査を実施する。貯金量200億円以上の信用事業を行う単位JAは平成31年10月以降、公認会計士監査に移行することとなる。

○JA・連合会の組織変更
 単位JAの判断で農協の新設・分割や株式会社・生協などへの組織変更ができる規定を置いた。この規定により、将来事業利用量規制が導入された場合に、規制を守れないJAには規制の対象外である生協や株式会社などに転換を求められる、といった展開も懸念される。



○JAグループの対応方向

 改正農協法の成立を受け、JAグループは、職能組合化や准組合員の事業利用規制などの懸念を払拭するため営農・経済事業の充実や准組合員との結びつき強化などの自己改革の実現を目指すこととしている。
 今後3か年の取り組み方針となる全国大会議案の中では「農業者の所得増大」を最重点項目とし、営農・経済事業の強化に全力で取り組むこととした。担い手支援の充実や需要に基づいた生産の強化、生産資材の価格引き下げなどの取り組みを組み合わせ、各JAが組合員の要望に基づいて実践内容を決めることが特徴。その後、決定した各JAの主体的な取り組みを中央会・連合会が後方支援し、JAグループ全体での所得増大達成を目指す。
 JAの理事構成については、今後の政省令での例外の在り方の決定を注視する一方、営農・経済事業の強化に向け、認定農業者ら担い手の登用拡大にも取り組む方針。准組合員については、食農教育の展開などJA・農業に親しみを持ってもらう取り組みや総会への出席などJA運営への意思反映を進めることでJAへの参加意識の高揚を図ることとしている。

○国会の付帯決議の概要

 参院農林水産委員会の付帯決議は改正法の今後の運用に対し、政府に慎重な対応を求めたものとなった。
 とりわけ、多くの懸念が残った准組合員の利用規制の在り方については、@農業者の経済的・社会的地位の向上を図る農協法第1条の目的を踏まえるA正・准組合員数の比較を規制の理由にしないB関係者の意向を十分に踏まえる、などを求めた。また、「農業所得の増大に最大限配慮」(改正農協法第7条2項)の規定を利用規制の根拠としないことも求めている。
 公認会計士監査への移行をめぐっては、JAの監査費用の実質的な負担が増えないよう実証することや監査士の専門性を生かすための配慮などを求め、JAの理事構成については、組織の自律性を尊重し、地域の実態を踏まえることなどを明記した。



 
 
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