特集 水田農業をめぐる情勢

生産調整見直しへ課題などまとめる 消費量は全国ベースで8万トン/年減少

 JA全中は3月3日、平成30年産米をめどとする米の生産調整見直しに向けた課題をまとめた。JAグループ内外の農業者らも含め、産地が一体となって取り組む需給調整に果たす行政の役割や担い手への収入保険制度など経営安定対策の在り方等を論点として指摘。集荷対応や米の独自販売を行う担い手への支援の在り方など、JAグループの事業の見直しも掲げた。今後議論を深め、9月をめどに取りまとめることとしている。

 近年の米の需要量は、全国ベースで毎年8万トン程度減少し続けている。JAグループでは、26年産米の米価下落を受け、主食用米の需給改善を最大の課題として各種活動に取り組んだ結果、平成27年産米における全国の水稲作付面積(主食用)は140万6000ヘクタール、収穫量は744万2000トンとなり、生産数量目標の配分開始以来初めて主食用米の過剰作付が解消されることとなった。

 また、今年2月に協定本文が確定したTPP(環太平洋パートナーシップ協定)では、重要品目とした米について、現行の国家貿易制度を維持するとともに、アメリカ・オーストラリアに対して7万8400トンの国別特別輸入枠を設定した。そのほか、麦についても事実上の関税であるマークアップを導入後9年後までに45%削減することとしている。

 TPPに関連して、平成27年度補正予算では対策費3122億円を成立させた。このうち、水田農業関連では地域の営農戦略に基づく機械・施設の導入や集出荷施設の再編、高収益作物への転換等を支援する「産地パワーアップ事業(505億円)」や水田の畑地化、畑地・樹園地の高機能化等を支援する「水田の畑地化等の推進(406億円)」等が措置されている。

 JAグループ京都においても、昨年11月に決議した第27回JA京都府大会決議「元気な京都農業と豊かな地域社会の実現」の重点実施事項の項目として「将来を見据えた水田農業振興対策」を盛り込み、京都米や黒大豆・小豆、WCS(稲発酵粗飼料)用稲をはじめとした飼料用作物の生産など、水田農業の振興に向けて全力で取り組んでいくこととしている。

【米の需要量の推移】
米の需要量の推移
(出典:農水省「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」

 JA全中がまとめた平成30年産米をめどとする生産調整の見直しに向けた現状と課題の概要は次のとおり。

30年産をめどとする生産調整の見直しをめぐる現状

◎新たな農業・農村政策の展開
平成25年12月に閣議決定した政府の「農林水産業・地域の活力創造プラン」では、今後10年間で農業・農村全体の所得を倍増させることを目指すこととした。政策の展開方向として、①農地中間管理機構の創設②経営所得安定対策の見直し③水田フル活用と米政策の見直し④日本型直接支払制度の創設―の4つが提起され、進められている。

◎米政策の見直しと生産調整の在り方
 平成30年産米をめどとする生産調整の見直しについては、「行政による生産数量目標の配分の廃止」を決定している。これは生産者・集荷事業者が行政の配分に頼らず、自らの販売可能量を見極めて生産量を調整することを求めるもので、引き続き主食用米の生産調整(需要に応じた生産)は必要な状況にある。
 30年産以降、国は生産数量目標の配分は行わないものの、全国ベースの需給見通しを示すとともに、産地別の需要実績や在庫状況等の情報提供を行う。また、地方行政や再生協議会では作物ごとの作付ビジョン(「水田フル活用ビジョン」)を策定し、戦略的に麦や大豆・飼料用米等の作付けを推進する。生産者・集荷団体はこれらを踏まえて経営判断や販売戦略に基づき作付品目と生産・販売量を決定する。国はこれらの仕組みを通じて水田のフル活用と需要に応じた主食用米の円滑な生産を目指すこととしており、その前提として麦・大豆・飼料用米等への支援措置を継続する。

◎水田フル活用への支援
  食料自給率・自給力の向上に向け、麦・大豆・飼料用米等の戦略作物に対して「水田活用の直接支払交付金」が措置され、生産拡大の取り組みが進められている。同交付金は①戦略作物助成②二毛作助成③耕畜連携助成④産地交付金―の4つからなる。特に地域で策定する「水田フル活用ビジョン」に基づき配分される産地交付金は、全国一律の単価設定である戦略作物助成等と組み合わせて活用することで特色ある産地づくりに寄与している。

◎経営所得安定対策の見直し
 「ゲタ・ナラシ対策」については27年産から対象者を認定農業者・集落営農・認定新規就農者とした上で規模要件を撤廃した。「米の直接支払交付金」は26年産から単価を7500円/10アールとし、29年産までの時限措置とした。「米価変動補填交付金」は26年産から廃止された。すべての品目を対象とした収入保険制度については、導入について調査・検討を進めるとされていたが、現在国が27年産を対象とした事業化調査を実施しており、早ければ29年の通常国会で法案が提出される予定。

◎日本型直接支払制度の創設
 農業・農村の多面的機能の維持・発揮に向け地域の農業者が共同で取り組む地域活動を支援する「多面的機能支払」を創設し、27年度から法律に基づく措置として実施されている。中山間地域等直接支払、環境保全型農業直接支援については基本的な枠組みを維持することとした。

◎その他
 都道府県ごとに「農地中間管理機構」を整備し、農地の集積・集約化を進めるほか、長期計画販売への支援として主産県を中心に「米穀周年供給・需要拡大支援事業」の活用に向けた検討を進めている。

今後の検討課題

◎需要に応じた生産調整の在り方
(1)JA系統以外の生産者等への働きかけに向けた、再生協議会の役割や行政の関与の在り方
(2)都道府県・市町村段階の生産の目安設定の仕組み
(3)国の需給に関する情報提供の在り方

◎担い手を中心とした需要に応じた生産の取り組み
(1)中心的な担い手への経営安定対策の充実
(2)米の直接支払交付金廃止後の財源の活用

◎JAグループの米事業の見直し
(1)買取販売の具体化と概算金に格差を設けることへの農家理解の促進
(2)担い手の直売支援と総合力を生かした事業展開の在り方
(3)概算金を米価の決定要因とする論調の是正に向けた、指標性のある価格形成の在り方

◎水田フル活用の取り組み
(1)法制化も含めた水田活用直接支払交付金の長期的安定性・継続性の担保
(2)飼料用米等の多収・低コスト生産の実現

◎農業・農村の多面的機能の維持・発揮対策
 日本型直接支払制度の拡充と担い手の所得増に繋がる農地維持支払の仕組みづくり

◎米の需要拡大
(1)米飯給食の促進に向けた学校等への働きかけの在り方
(2)米の輸出拡大に向けた政策支援の在り方

【現在の水田農業政策の枠組み】
現在の水田農業政策の枠組み

 
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