特集 農作業安全の確保に向けて

秋の農作業安全月間定める 農繁期の事故防止へ取り組み

 JAグループ京都は秋の農作業が本格化する中、9月1日から10月31日の期間を「秋の農作業安全月間」と定め、農作業事故の防止に向け取り組んでいる。

 これは平成26年2月に全中が決定した「JAグループにおける農作業安全および労災加入促進に係る取組み方針」に基づく全国運動の一環。具体的には、JA広報誌への掲載やポスターの掲示、各種研修会の開催など全国・都道府県・JAの各段階でそれぞれ取り組みを進める。また、JA京都中央会では、11月11日に農作業安全や労務管理への理解を深めるための研修会を実施することとしている。

 農作業事故をめぐっては、毎年全国で350件前後の死亡事故が発生しており、農業従事者数が減少していることから農業従事者数に占める事故件数の割合は増加している。農作業における安全の確保は全国的に見ても喫緊の課題となっていることから、農林水産省においても「2016年 秋の農作業安全確認運動」を展開しており、8月下旬から9月にかけて農業関係者や労働安全衛生関係者が集まる「農作業安全推進ブロック会議」を全国9ブロックで行うなど、官民を挙げた取り組みが進んでいる。

 労災保険をめぐっては、農業法人への支援の一環として平成22年にJA京都中央会内に「JAグループ京都労働保険事務組合」を設置し、「JAグループ京都農業法人協会」の会員を中心に労働保険加入事務の手続を行っている。現在では、委託事業主数は65事業主で、今後も労務管理の必須事項として、労災保険の加入を推進していく必要がある。

農作業安全月間の啓発ポスター
▲農作業安全月間の啓発ポスター

 農作業事故の防止にあたっては、農業者一人ひとりが危険要素に十分注意しながら農作業にあたることはもちろんだが、地域やJAなどと連携して作業環境の改善や正しい知識・技術の習得を図ることが極めて重要となる。本府においても、同月間を通じて組合員と役職員がともに農作業安全への意を高め、事故の根絶を目指していくことが求められる。

 農作業事故の現状と事故防止に向けてのチェックポイントは次のとおり。(農林水産省資料より)

◆農作業死亡事故の現状

 農林水産省が発表している平成26年の農作業中の死亡事故発生件数は350件で、前年と同数となった。
 事故区分別では農業機械作業に係る事故が232件と最も多く、全体の66.3%を占める。
 このうち、機械別では「乗用型トラクター」による事故が最も多く、95件(農作業死亡事故全体の27.1%)、次いで「農用運搬車」が32件(同9.1%)、「歩行型トラクター」が30件(同8.6%)と、これらの3機種で農作業死亡事故全体の44・9%を占めている。
 原因別にみると、乗用型トラクターと農用運搬車では「機械の転落・転倒」が合わせて90件、歩行型トラクターでは「挟まれ」が14件とそれぞれ最も多い原因となっている。
 また、年齢階層別にみると、65歳以上の高齢者による事故が295件と、事故全体の84.3%を占める結果となり、過去10年間で最も高い水準となった。農業就業者の高齢化が進む現在、高齢者の農作業事故防止はますます重要性を増している。

◆農作業事故の防止に向けたチェックポイント

◇機械作業全般に係る注意事項

○作業中断時のエンジン停止
 作業を一時中断するときにエンジンをかけたままにしておいた結果、草刈機の刈刃など危険な部分に接触し、負傷するという事例が見受けられる。このため、機械作業の中断時には必ずエンジンを止めることを心がける必要がある。

○確実な駐車ブレーキ
 駐車ブレーキが確実にかかっていなかったため、停めたトラクター等が勝手に動き出し、転落事故や怪我に至ったケースが見受けられる。トラクター等を傾斜地に駐車する際には、駐車ブレーキを確実にかける必要がある。そのほか、「作業機を地面に下ろす」、「エンジンを止めて傾斜方向逆側にギアを入れる」などの点にも注意する。

○常時安全な操作・装備
 「ちょっとだけだから」とトラクターの左右ブレーキの連結や防護メガネの装着を怠った結果、転落事故やケガにつながった事例が見受けられる。農作業に伴う危険要素に配慮し、常に安全な操作や装備を心がける必要がある。

2016年 全国農作業安全確認運動のステッカー
▲2016年 全国農作業安全確認運動のステッカー

◇農作業中の装備・環境等に係る注意事項

○ヘルメットの常時着用
 転倒等により頭部に外傷を負う事例の中には、ヘルメットを着用していれば大ケガにならなかったと考えられる事例が散見される。ヘルメットの常時着用を心がける必要がある。

○携帯電話の常時携帯
 単独での作業中に起きた事故で、携帯電話を持っていたために発見・救命につながった事例がある。自宅の納屋など近い場所でも必ず携帯電話を持ち歩くことが必要である。また、可能な限り複数人で作業を行うほか、朝出かける前に、家族に1日の作業計画や場所を予め知らせる習慣を身につけることも、事故防止に極めて有用となる。

○危険場所への目印等の設置
 農道と路肩の境界がわかりにくかったため、コンバインが路肩を踏み外して転落し、運転手の死亡事故につながった事例がある。路肩が明確になるよう草刈りを行うことはもちろん、ポールを立てるなど、危険箇所の「見える化」を進める必要がある。

◆個別事例

○トラクターで走行中、用水路に転落
・現場の状況=トラクターで農道を移動中、左手にロープを持って片手運転したところ誤って用水路に転落し、腰骨盤骨折等の大ケガを負った。トラクターに安全フレームは未装着であった。
・留意点=片手運転、脇見は大事故のもと。
・防止のポイント=(1)ハンドルの両手持ちを厳守する、(2)万が一の転倒に備え、安全フレーム未装着トラクターは運転しない、(3)地域ぐるみで基本的な農作業安全意識の向上を図る。

○脚立を使用して収穫作業中、脚が完全開脚して転落
・現場の状況=傾斜地で柿の収穫作業中、脚立の3本のうち1本の脚を大きく開いて設置したところ、開いた脚が滑って落下。足の骨を折る大ケガを負った。脚立を大きく開脚していたため開脚防止のチェーンが掛けられていなかった。
・留意点=脚立の開脚防止チェーンは必ずかける。
・防止のポイント=(1)無理な脚立の使い方をしない、(2)脚立上はバランスが悪いので重心のかけ方に注意する、(3)開脚防止の鎖の長さ以上に脚を広げたり、狭く直立に近い状態での脚立の使用を地域ぐるみで防止する。


 
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